【リクガメ】

リクガメに魅せられて

~リクガメ研究家  木村 和生(ウルトラの父)~ 改訂:平成201001日

元の原稿は、アクア・マガジンピープ19998(10)に掲載されました。


 アクア・マガジンピープ19998(10)に掲載された原稿に少し手を加えた読み物で、カメ全般、繁殖、ギリシャリクガメの孵化実体験、ケヅメリクガメとホウシャリクガメについて、詳細を記します。イギリスの探検家、キャプテンクックが、トンガ女王に贈ったカメの話も掲載しております。ご一読下さい。
 また、初めに小生が皆様にお伝えしたいことは、カメは大きく分けて、ウミガメ、水棲ガメ、リクガメに分類されること。そして、リクガメでも、常に熱帯で生息する種と、冬眠を必要とするリクガメには大きな違いがあることを認識し、よくよく勉学に励んで戴きたいと心より願っております。草々

  「カメは万年」とは言うものの、実際のところは平均的には30年から40年の寿命と思ってください。マダガスカル諸島原産のホウシャリクガメやガラパゴス諸島原産のガラパゴスゾウガメ、またアルダブラ諸島原産のアルダブラゾウガメなどの大型種、そして、ウミガメの一部に特例として100年以上は生き延びているものもあるようです。しかし、カメの年齢については、未だに推測で判定されるので、未知の部分が多いですね。

  意外に知られていないのはリクガメの餌ですね。主食は、飼育下では、小松菜、モロヘイヤ、チンゲン菜、白菜といった緑葉野菜です。最近は、リクガメ専用の人工飼料もたくさん出回っていますが、これには賛否両論がありますので、ここでは省略させていただきます。その他、ビタミン・ミネラルが豊富に含まれた、たんぽぽやクローバーなどの雑草を好んで食べます。副食としてフルーツもいいでしょう。我が家ではフルーツを与えるときにはカルシウム剤を振り掛けています。リクガメにとって、ビタミンやミネラル、カルシウムは不可欠です。また、少し高価ですが、牛乳の約30倍もカルシウムを含むウチワサボテンも食べます。あと、忘れてはいけないのが、水飲み場を設けてあげることですね。飼育下では、リクガメのために一日中ケージ内を27℃から35℃にしなければいけないので、結構乾燥してしまって脱水症状を引き起こすことがあります。喉が渇けば自分からその水飲み場に足を運んでゴクゴクと飲んでいる姿をよく見かけますので、飲み水はかかせません。

  リクガメの好きなことは食べることと、寝ること、そして日光浴に温浴です。日光浴はカメにとって特に重要で、飼育下では人工紫外線灯を使います。温浴は、人間の体温より少し暖か目のお風呂です。間違っても、カメが首を伸ばしても顔が水面から出てこないような深いお風呂に入れないようしましょう。ほとんどのリクガメは泳ぐことができませんので、溺死します。カメの溺死、不思議かもしれませんね。そのことを知らずにペットショップでリクガメを購入して、いきなり金魚の水槽に入れられ溺死したという話しをよく耳にします。笑ってはいられません。

  1998年の7月に我が家で初めてギリシャリクガメのベビーが誕生しました。約一週間かけて5匹のベビーが次々と孵化しました(内3日間は、寝る間も惜しんで観察に専念しました)。かわいいですよ、ほんと。生まれたときは3cmほどの甲長(甲羅の端から端までの直線距離)でしたが、約半年ほどで5匹ともが9cmに達しました。今は、カメ仲間に手渡りましたが、すくすくと成長ぶりを発揮しているようです。

  リクガメ飼育で苦労したのは、一に勉強、二に勉強です。カメが体調を崩したときに診ていただける獣医さんが、あまりに少ないということです。カメはそもそも丈夫な生き物ですから、紫外線照射と温度管理、そして栄養バランスさえ考えてあげれば、すくすくと育ちますが、知識のないペットショップから引き取ったカメに、弱ったものがいます。そのようなカメを救うために、あらゆる爬虫類の獣医学書を集め、勉強し、今では近所の獣医さんと相談の上、適切な薬をわけてもらって自分で看病しているありさまです。注射器と抗生物質の入手は素人では大変難しいです。信頼できる獣医さんにご相談を。

  我が家には、ホウシャリクガメのペア、クモノスリクガメ、ケヅメリクガメ、ヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメ、ゴファーリクガメのペア、パンケーキリクガメがいました。ヌマガメ系ではニホンイシガメもいました。といった具合で我が家はカメハウスと化して、大変にぎやかでした。最高で29匹。

  私は、「ウルトラの父」というハンドル名で活動していました。現在は、諸事情で活動は特に行ってはおりませんが、勉強・研究は続けております。生きたカメだけでは事足りず、カメグッズコレクタとしても活動していました。カメとカメグッズに全財産をつぎ込んでしまいました。

カメを既に飼っているとか、これから飼ってみようと思うのですがといったご意見やご要望、ご質問等ございましたら、お気軽にお便り下さい。対応可能な限り協力は惜しみません。

  ホームページ: http://ultra-father.jimdo.com/    メール: ultra_father@k2.dion.ne.jp

 

  今回紹介しておきたいリクガメ2種の特徴などを以下に紹介しておきます。1つは、ケヅメリクガメ。こちらは、ペットショップで売られているときは可愛いからと言って安易に手を出して後悔するケースが多いです。甲長が80cmほどに達しますからそれなりに覚悟を決めて購入すべきです。最後まで責任が持てないなら飼うべきではありません。もう1つは、美しさに魅了されるホウシャリクガメです。ホウシャは、現在、生息地域でも野性個体が激減しているためサイテスⅠ(ワシントン条約のⅠ類)で、厳重に輸出が禁止されていて、学術目的以外に入手することは、ほとんど困難です。

 

【ケヅメリクガメ(Geochelone sulcata)の紹介】

  ケヅメリクガメは、コモン名でAfrican Spur-thigh Tortoiseあるいは、African Spurred Tortoiseと呼ばれ、その名の通りアフリカに生息している。アフリカ西部は、ゼネガル、ガンビアからアフリカ東部のエチオピア、エリトリアに至るまでかなり広範囲に点在し、草原や、薮の中で発見される。最大甲長は、1925年に83cm(体重105kg)と記録されている。成長記録としては、18年で甲長75cm、体重60kgに達すると記録されている。ほとんどのリクガメ種は、オスよりメスの方が大きくなるが、ケヅメリクガメはその逆で、メスよりオスの方が大きくなる。また、ほとんどのリクガメ種の性成熟は、自然下では10~12年とされているが、ケヅメリクガメの場合、成長が早く、5~6年で性成熟するケースもある。生息地域の温度は、日中で25~32℃、夜間で21~24℃。湿度は、低湿度から中湿度を示す。しかしながら、飼育下では、特に幼体のときは、夜間でも27℃を下回ると、鼻水を垂らしたりといったトラブルが多いようである。筆者のおすすめは、ケージ内を27~32℃に保ち、日中は、35℃前後のスポットライト域を設け、1日に数回霧吹きで水気を与え、40%以上の湿度を維持したいところである。湿度が、40%を下回ったからといって体調を崩す事はないと思うが、乾燥肌になるようだ。逆に湿度が高いからといってトラブルを起こす事もないと思われる。リクガメ種の中でもケヅメリクガメは、活動的で、何でも良く食べ成長も早いため、安心して飼育できるリクガメである。また、ケヅメリクガメは、飼育下では、モロヘイヤ、小松菜などの濃緑葉野菜主食とするほぼ完全な草食動物である。ここでほぼ完全なとした理由は、自然下では、動物の死骸の肉片や、動物の糞からある程度のたんぱく質を摂取しているため、飼育下でもこれに代わるたんぱく源が必要と考えるからである。飼育下においてその他気をつけたい点は、飲み水である。ケージ内は、常に乾燥気味のためか、浅い器に水を入れてケージ内に設置してやると、たまに水を飲んだり、その中に浸かって温浴らしい行動をとり、排便する姿がうかがえる。そのため水がすぐに汚れてしまう。ケージ内を清潔に保つためにも、是非こまめに水を取り替えてやりたい。ケヅメリクガメの繁殖に関しては、西ヨーロッパや北アメリカで盛んに行われているようである。ヨーロッパの繁殖事例からは、ケヅメリクガメの繁殖成功率は非常に高く、繁殖周期も他のリクガメ種より早いと報告されている。同じくヨーロッパにおいて、ケヅメリクガメのメスが一度に産卵した卵の数は最高で34個と記録されており、標準でも15個を産卵すると報告されている。最近では国内でも繁殖が盛んに行われているようだ。

 

【ホウシャリクガメ(Geochelone[Asterochelys] radiata)の紹介】

  ホウシャリクガメは、コモン名でRadiated Tortoiseと呼ばれ、マダガスカル諸島南部に生息しており、世界一美しいカメとして知られている。国内では、マダガスカルホシガメと称される事もある。この非常に魅力的なカメは、甲羅の装飾品や、現地の食用のため、マダガスカル内で乱獲され続けています。また、国際的なエキゾチックマーケットで見つける事ができます。サイテスⅠにリストアップされてからは、大幅に取り引きが減少しましたが、今なお、違法な取り引きは続いているようです。1777年に、イギリスの探検家キャプテン・クックがトンガ女王に贈ったカメがこのホウシャリクガメだったそうです。189歳まで生き延びたという言い伝えもありますが、これは、定かではありません。ホウシャリクガメの公式的な最年長記録は137歳だと言われています。最大甲長は、40cmに達し、体重は13kgまでと記録されています。黒もしくは茶色の甲板を持ち、各甲板の中心から黄色もしくはオレンジの4~12本の放射状の模様が特徴です。幼体ほどその模様が鮮明に現れています。飼育環境は、ケヅメリクガメなどその他のリクガメと特に違いはありません。特徴としての大きな違いは、Geochelone属は、Testudo属(地中海系)によく見られる尿酸を排出しないところにあります。尿酸にしないで、尿を完全にアンモニアに分解します。よって、人間などの哺乳動物に近いと言えるでしょう。ホウシャリクガメは、完全な草食で、飼育下では、濃緑葉野菜の他、とげのないサボテン(Opuntia)を好んで食べるようです。赤い果実や花も好んで食べるようですが、与えすぎると下痢になるようです。生息地域の温度は一年を通して約20℃~27℃。時には最高気温は40℃に達する事があるようです。そのせいか、温度変化にはかなり適応できるようです。自然下では、完全な無菌状態の茶砂にいるためか、まれに飼育下で、他のリクガメと同じケージに入れてしまったがために、トラブルを起こしたというレポートがありますが、それほど大きな飼育上のトラブルはないようです。他のリクガメとの共存飼育さえ避ければ問題はないでしょう。ホウシャリクガメの飼育下での性成熟は、明らかではありませんが、自然下では15~20年と言われています。米国のレポートによれば、60歳になったホウシャリクガメですら、繁殖活動がまだまだ活発に行われているようです。メスが一度に産む卵の数は、6~8個です。一年を通しての産卵回数は、7回以上、多いときは14回にも及ぶことがあります。卵は、直径36mm×42mmほどの球形で、30℃で孵化させた場合、95日~112日で孵化を迎えます。更に低い温度で孵化させた場合は、230日にも及んだという記録もあります。逆に温度を32.5℃に設定して最短で71日で孵化したという記録もあります。孵化日数がオスメスを判別するかどうかについては未だリクガメ属については賛否両論がありますが、筆者の経験では、温度を高くして早く孵化させた個体は、オスが多いようです。米国では、ブロンクス動物園が主観となりSSP(Species Survival Plan)と呼ばれる個体保護活動のプログラムが組まれています。これは、絶滅の危機からホウシャリクガメを救おうというのが狙いで、また、ここの両性爬虫類学者兼図書館長であるJohn Behler氏は、マダガスカルに生息する野生のホウシャリクガメを保護しようと活動に取り組んでいます。SSPからは、定期的にかなり詳しい研究レポートがあげられています。その中の一部にたいへん興味をひく内容があったので、紹介しておくと、このホウシャリクガメ、別名マダガスカルホシガメや、インドやスリランカに生息するホシガメは、たんぱく質を多く与えると、各甲板がピラミッド状に盛り上がってくる事はよく知られています。飼育下で一度デコボコになったリクガメが、無事に産卵を迎えた場合、その子供は、成長過程でたんぱく質を一切あたえなくとも同じように各甲板がピラミッド状に盛り上がってくるようです。おそらく遺伝子の問題と考えられていますが、「蛙の子は蛙」ということになります。リクガメを飼育する場合は特に注意したいですね。飼育下では健康状態を見ながら、キャベツのように栄養価の少ないものを主食にしても良いのではないかというのが、私の率直な最近の思いです。


★小生のリクガメを紹介します。

ホウシャガメ1

マダガスカル諸島に生息するホウシャリクガメのブラック亜種です。名前はベス。ちょっとわがままな性格の♂です。サイテスⅠ類ですから許可がないと飼えません。俗に言う「種の保存法」で保護されています。名前はベス


ホウシャガメ2

名前はティガ。ちょっとおっとりした性格の♀です。


アルダブラゾウガメ

アルダブラ諸島、セイシェル諸島、モーリシャス諸島などに生息するアルダブラゾウガメです。名前はゼアス。性別はまだまだわかりません。とても神経過敏です。こちらはサイテスⅡ類です。現在はⅠ類かも???


私のカメたち

気持ち良さそうに日光浴中!



最近の成長ぶり

環境省の許可が必要です。1978年以降。2018年現在、環境省(ご担当柳原様)の許可を頂いております。



★カメグッズを少し紹介

Tiffany goods

ティファニーのキーホルダーです。シアトルとグアムでGET!海外限定です。


ブリキとセルロイド

ブリキとセルロイドの昭和レトロな

おもちゃ類です。

紹介しきれないくらいコレクションしています。


自作の抹茶碗

自作ホウシャガメ図柄の抹茶碗
(大塩正人氏の土・釜にて)


マグカップ

2018年5月時点のカメの成長ぶりをマグカップにしました。甲長約40cmでしょうか。ほぼほぼ成体サイズにまで成長して来ました!



★一般的に多いカメに関するQ&A集

おおよそ10年ほど前に甲羅同盟でまとめたQ&A集です。カメの歴史は深いので現代でも少しはお役に立てるのではないでしょうか。当時のハンドル名などは、個人情報保護法の関係もあり、極力省略させていただいております。ご了承くださいませ。

 【質問集一覧】


 ★ 飼育準備編 ★

01.ゼニガメ、キンセンガメ、ミドリガメの正式な名前は?
02.何年で、どのくらい大きくなりますか? 寿命は?
03.あらかじめ準備するものは? 予算の目安は?
04.飼育容器は何がよいですか? 大きさは?
05.温度設定は何度くらいがよいですか? 冬の保温法を教えてください。
06.どのような照明器具を使うのですか?
07.餌(配合飼料)は、何を与えますか?
08.魚やその他の生き物といっしょの容器で飼えますか?
09.亀には、バイ菌があるってほんとですか?(サルモネラ菌について)
10.飼えなくなったので、自然に放してもいいですか?

 ★カメ購入編★
11.飼育器具やカメが買えるペットショップを教えて。
12.元気なカメの選び方は?
13.クサガメとイシガメの見分け方を教えてください。
14.いっしょに飼えるカメ、飼えないカメ、がありますか?
15.性別の見分け方を教えて

 ★ 飼育開始編 ★
16.水深は、どのくらい?
17.底砂(砂利)は必要ですか?
18.陸地のつくり方は?(陸と水の割合、陸地の材質や構造について)
19.シェルターは必要ですか? また、材質や作り方など教えてください。
20.水草や流木などで綺麗にレイアウトしたいのですが、問題ないですか?
21.衣装ケースにライトを取り付ける方法は?
22.衣装ケースがヒーターの熱で溶けない工夫がありますか?
23.水換えは、どのくらいの間隔でするのですか?
24.水換えのときは、水道水をそのまま使っていいの?
25.夏に屋外で日光浴をさせるときの注意点は? 日光浴時間は?
26.生き餌には、どんなものがいいの? 生き餌の注意点は?
27.人工飼料や生き餌以外にも食べるものはありますか?
   また、食べてはいけないものは、ありますか?(お肉、刺し身、植物等)
28.カルシウムは、どうやってあげるの?
29.とても憶病で、人が近づくと、すぐ水に潜ってしまいますが、
   どのくらいで馴れますか? 馴れさせるコツなどありますか?

 

 ★ 飼育&観察 ★
【エサについて】
30.どのくらい食べるの? 肥満でしょうか?(量や給餌間隔について)
31.好き嫌いをするのですが、どうすれば直りますか?
   (人工飼料を食べない/1種類のものしか食べない、など)
【飼育環境について】
32.ろ過器(フィルター)は必要ですか?
33.飼育水に、5ミリほどの白いミミズがいます。何ですか? 対策は?
34.夏場の高温対策を教えて下さい。
35.座敷ガメにしたいのですが、注意点などありますか?
   どのくらいの時間なら出してても大丈夫? その間のウンピは?
【多頭飼育について】
36.2匹がよくケンカをしますが、分けた方がいいですか?
  (一方がエサや日光浴場を独り占めする/尻尾などを食いちぎられる等)
【健康について】(症状別の原因と対策)
[行動が、おかしい]
37.エサを食べませんが、どうしたらいいでしょうか?
  (元気もなく、じっとしてる。食が細い。もう何日も食べていない。)
38.うまく泳げない(片方が浮く/お尻だけ浮くなど)
39.陸に上がってきません。
40.下痢しています。
[身体に(外見上)異常がある]
41.甲羅が剥がれてきましたが、病気ですか?
42.手足の皮膚が剥けます。白くふやけています? 病気ですか?
43.目が腫れている。目が開かない。
44.皮膚(甲羅)に白い斑点があります。何でしょうか?
45.イシガメが皮膚病のようです。治療法を教えて下さい。
46.甲羅が柔らかいんですが。
47.病院を教えてください。
48.薬は、どうやって飲ませるの?
49.(ケンカなどで)怪我しました。処置は?
【冬眠について】
50.初めての冬ですが、冬眠するのでしょうか?
51.冬眠の方法を教えて。
  ・水深、水量/温度/水換え頻度/土や落ち葉はいるの?
【その他】
52ミドリガメが手をぷるぷると震わせていますが、何をしているんですか?
53.留守をするときは? 置いていく場合の餌や水質管理について。
   預かってくれる所はありますか?
54.カメを連れて帰省したいのですが、運搬方法を教えてください。
Q55.初心者向けの本はありますか?

回答は........

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